-夏侍- 梅雨が 暑さの本番を拒み 夕立を奏でる 泣いて喚く子供のように あと少しもすれば 季節は着せ替える 迎える 昭和と平成を跨ぐ 30回目の三伏 大気の不安は 情緒不安な浮世と誠に同じ これはまた 大きな大きな 見事な水溜りを作られた そこに映る 私の顔は少し窶れ 疲れてる 増えた皺の数だけ 愛しみも憎しみもある 厚かましい顔だ 殖える柵は 黄泉路への覚悟を後込ませる 欲深く用心に掛ける未熟者 自然の摂理に従うことに罪はないと 信じ貫く 戻れぬ 過ちの道こそ罪であれ 目紛しく変動する世情に 己の風体の蒼然さに恥しさを覚える 背けた悲しみは あの日の後を追ったまま帰らない びしょ濡れた地肌は 容赦ない灼熱の陽射しに乾かされ 泣き笑いと汗は 空に昇り 雲となる また当て所ない放浪の旅に出る 一時も休まず 励ましの声など何人からもなく 自由とは 強さであって哀れでもある 挫けてしまえば 寂しさは喜んで現を食らう せめてもの奢侈 偶然にも 偶然にも 偶然にも 旅路で此方とすれ違っていれば なんと豊かな 鳥滸がましい 私なんかは 孤独の孤独で足りるはず ふっと消える消滅の日まで 浮かぶ脆弱な魄にしがみ付けばいい 青色が教える理に学ぶ 恵 これからも夏を待ち遠しく ひとつ またひとつ数ふ 祖で振り合うも多生の縁 何処からか 風鈴の音に今年も夏の確かな訪れかな どうせ昨日は夢幻…どうせ明日は夢幻・・・夏